なぜ平衡問題で手が止まるのか? 過程ではなく状態で考える物理化学の思考法 | 東進ハイスクール 茗荷谷校 大学受験の予備校・塾|東京都

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2025年 11月 12日 なぜ平衡問題で手が止まるのか? 過程ではなく状態で考える物理化学の思考法

茗荷谷校担任助手三年の伊藤誠道です! 皆さん、こんにちは!

すっかり秋も深まり、人によっては少し肌寒く感じる季節になってきましたね。体調管理には一層気をつけていきましょう。

さて、前回のブログでは、理系科目の二次試験レベルの問題と向き合うための思考の切り替えについてお話ししました。

今回はその続編として、理系科目の勉強を進めるうえで、皆さんに一つ質問です。 突然ですが、物理や化学のこんな単元で手が止まってしまうことはありませんか?

  • 化学:「化学平衡(圧平衡定数・濃度平衡定数)」「酸・塩基の中和滴定」「緩衝液」「溶解度積」

  • 物理:「電磁気(回路問題)」「熱力学(状態変化とエネルギー保存)」

一見すると、それぞれ別の単元のように見えますよね。

ですが、もしこれらの多くに「苦手だなぁ…」「いつも解法を悩んでしまう…」と感じる共通点があるとしたら、

それは平衡状態という、物理化学の根幹をなす非常に重要な考え方の扱いに慣れていないからかもしれません。

特に、入試問題でよくある「ある状態から別の状態へ変化させたとき、どうなるか?」という、平衡が移り変わる問題の解き方が分かっていない可能性が高いです。

今回は、多くの受験生が苦戦する平衡が絡む問題の攻略法について、僕なりの考えを具体的にお話しします!

なぜ平衡の問題で手が止まるのか?

 

まず、「平衡状態」とは何でしょうか。教科書的には「見かけ上、変化が停止している状態」と説明されます。化学反応であれば正反応と逆反応の速度が釣り合った状態、物理であれば物体に働く力が釣り合っている状態ですね。

一つの平衡状態だけを考える問題なら、公式や定義に当てはめれば解けるかもしれません。

しかし、入試問題、特に難関大の問題になると、「状態1」だったものに何らかの操作(薬品を加える、熱を加える、圧力を変えるなど)を加えて、「状態2」へ、さらに「状態3」へと…平衡が次々に移り変わっていく問題が頻出します。

ここで多くの受験生がつまずきやすいポイントがあります。

それは、「状態1から状態2へ、どのような過程を経て変化するのか?」と、変化の時系列・プロセスを真面目に追いかけようとしてしまうことです。

「どのくらいの速度で、どういう経路をたどって次の平衡に移るんだろう?」

「その変化の途中を立式しないといけないのでは?」

このように考え始めると、もう手は動きません。

それもそのはず。その「変化の過程」を厳密に記述するには、多くの場合、大学で学ぶ微分積分(速度論)の知識が必要になるからです。当然、高校の物理・化学の範囲では明確には扱われません。

つまり、入試問題で「変化のプロセス」そのものを正面から考えようとするのは、そもそも解き方のアプローチが間違っている可能性が高いのです。

 

攻略法①:過程は無視し、状態だけに着目

 

では、どう解けばいいのか。

私たちがやるべきことは、時系列の「動画」で変化を追うことではなく、「状態1」と「状態2」という2枚の静止画を個別に分析し、その2枚を繋ぐことだけです。

具体的には、以下のステップを踏みます。

  1. 【状態1の分析】

    まず、最初の平衡状態について、分かっていること、分かっていないこと(未知数 $x$ など)を整理し、立てられる式(平衡定数の式など)をすべて書き出します。

  2. 【状態2の分析】

    次に、変化が起こった「後」の、次の平衡状態について考えます。ここが最重要ポイントですが、「状態1からどう変化したか」は一旦忘れて、まっさらな状態で「状態2」だけを見つめます。

    問題文の条件を読み取り、新しい未知数(y など)を置いて、この状態だけで立てられる式をすべて書き出します。

  3. 【2つの「状態」を繋ぐ】

    最後に、独立して分析した「状態1」の式と「状態2」の式を、連立方程式として解きます。

「え、それだけで解けるの?」と思うかもしれません。もちろん、これだけでは式に対して未知数が多すぎることがほとんどです。

そこで、この2つの状態を繋ぐ方法が必要になります。

 

攻略法②:保存則を使いこなす

 

「状態1」と「状態2」を繋ぐカギ、それは保存則です。

操作を加えたことで、温度や圧力、濃度などは変わるかもしれません。しかし、その操作の前と後で、絶対に変わらないはずの値が必ず存在します。

その変わらないものに着目して式を立てるのです。

<具体例:化学平衡>

例えば、酢酸(CH3COOH)の水溶液(状態1)に、酢酸ナトリウム(CH3COONa)を加えた場合(状態2)を考えます。

  • 「途中」を考えると…

    CH3COONa を加えると、CH3COOが増えるから、ルシャトリエの原理で平衡が左に移動して…と、変化の「向き」は分かります。

    しかし、「どれだけ移動するか」を「変化の過程」から考えるのは困難です。

  • 「保存則」で考えると…

    この操作(CH3COONa を加える)で変わらないものは何でしょうか?

    いいえ、変わらないものはありません。加えた分だけ物質量も体積も変わります。

    では、視点を変えます。「状態1」と「状態2」の両方の状態で、成り立つ関係式を探します。

    それは、「(CH3COOH としての酢酸)と(CH3COO としての酢酸)の合計の物質量」や「ナトリウムイオン Na+ の物質量」、そして「溶液全体の電荷の総和はゼロ(電荷保存則)」といった情報です。

    特に「物質量保存」は強力です。

    (状態2での酢酸の全濃度)=(もともとあった酢酸の濃度)+(加えた酢酸ナトリウムの濃度)

    といった、「結局、そこにある『酢酸由来のもの』や『ナトリウム由来のもの』の総量はいくつなのか」という当たり前の関係式を立てるのです。

    平衡定数の式と、この保存則の式を連立することで、未知数を一気に消去し、答えにたどり着くことができます。

<具体例:物理(熱力学)>

シリンダーに入った気体(状態1)のピストンに、重りを乗せて圧縮し、静止させた(状態2)場合。

  • 途中を考えると…

    ゆっくり圧縮した(準静的過程)」なら PV= 一定 (等温) や PVγ =一定 (断熱) が使えますが、重りを乗せた場合、途中の圧力や温度はメチャクチャで、定義できません。

  • 保存則で考えると…

    私たちは「状態1」(P1, V1, T1)と「状態2」(P2, V2, T2)だけに着目します。

    この2つを繋ぐのは、「気体の物質量 n が変わらない」という物質量保存、そして「エネルギー保存則(熱力学第一法則 ΔU = Q + W)」です。

    途中の P や V が分からなくても、最初と最後の状態方程式、そしてエネルギー保存則を立てれば解けるように設計されています。

このように、変化の過程ではなく、変わらないもの(保存則)に着目して、2つの状態を式で繋ぐ。これが平衡問題を解くための核心的な思考法です。

 

攻略法③:思考を整理するための「状態図」の活用

 

最後に、特に平衡が3つ、4つと変化していく複雑な問題で絶大な効果を発揮するテクニックを紹介します。

それは、平衡状態を図示することです。

問題文を読みながら、状態がどう変わったのかを、簡単な図で書き出していくのです。

書き出すメリットは2つあります。

  1. 今、自分がどの状態について考えているかを見失わない

    複雑な問題では、「あれ、この xってどこの濃度だっけ?」と混乱しがちです。図で全体像を把握することで、思考が整理されます。

  2. ショートカットに気づける

    これが非常に強力です。問題によっては、「状態1」と「状態3」の条件を比較すると、間の「状態2」をすっ飛ばして一気に解けることがあります。

    例えば、「状態1」と「状態3」で比べると、「結局、トータルで何を加えたのか」だけが重要で、途中の経過はどうでもいい、といった場合です。

    図で全体像を可視化していると、こうしたショートカットに気づきやすくなります。

 

最後に

 

物理化学の平衡は、多くの理系受験生にとって最後の壁です。

  1. 変化のプロセスは追わない。

  2. 状態ごとに静止画で分析する。

  3. 保存則で、状態と状態を式で繋ぐ。

  4. 図を書いて全体像を把握し、思考を整理する。

この思考法をマスターすれば、複雑に見えた平衡の問題が、単なる連立方程式を解く作業に見えてくるはずです。

難易度の高い問題にぶつかることも増える時期ですが、それは皆さんが次のレベルに進もうとしている証拠です。一つ一つの経験を自分の力に変えて、この勝負の秋を乗り越えていきましょう!

皆さんの挑戦を、心から応援しています!!

今日の茗荷谷校の順位は

445位/1000位

 

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明日(11月13日)も茗荷谷校の皆さん一日頑張っていきましょう!!!

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